回転する蜻蛉/しめじ
 
けたように遠雷の音に耳を澄ましていた。漁師達の村までは雲はやってきていない。欠けた月が西の空にぶら下がっていた。

「八十回目やのう」

 遠い光を見て女が呟いた。漁師は空のぐい呑みをくるくると回していた。生ぬるい風が頬を撫でていく。いつの間にか瓶は空になっていた。

「兄さんがのう、昨日呼んだんじゃ。土手の上をぶらぶら提灯持って歩いて。薄ぼんやりした光が暗いところに尾を引いたように流れていくんじゃ。あんまり魚ばかり食わんほうがええよって言うてた。振り返ったら坊さんが托鉢をしょってな、銀を流したような澄んだ音で鈴を鳴らしとった。見上げると星空じゃ。きれいやったな」

 酒精で頬を染
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