回転する蜻蛉/しめじ
 
 翌朝、アサガオが朝露に濡れた花弁を揺らしている。初夏の曙に漁師は今日も銛を携え沖へ出る。船は一艘。漁師が戻ってくるまで漁村は眠ったように静かになる。

「風がぬるうなった」

 誰に伝えるでもなく、漁師はそう呟いた。人魚が網に掛かったので、銛で突いて桶に入れる。この辺りで獲れる魚はこんな物しかない。

 日が落ちて、浜に戻ると女が一升瓶を持って待っている。生ぬるい風が吹いて寝苦しい季節がやってくる。何度となくやってきた夏がくる。遠い空に稲光が走った。黒い雲がゆっくりと東へと流れていく。漁師は網を引き上げて、村へと戻った。

 いつものように女が一升瓶を掲げて立っている。女は惚けた
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