「兎」/菊尾
 
に。
僕は呆然としていた。酔いも醒めつつあったが、酔いの一興か?と疑う自分も居た。
「あ、すみません。近付いてきていたことに気がつきませんで騒ぎ立ててしまって。何分、目が悪くて。」
兎、いや動物の類は気配に対しては敏感なのでは?と訝しむがそもそもの間違いに気が付く。
話した?兎が喋った?!
「え?!」目玉が零れ落ちそうなぐらいに驚いたが、両眼は確実にその兎を捉えているので零れていないことに安堵する。

「ああ、違います。話しているのではなくテレパシーです。念話というやつです。人語は話せません、私の身体構造では。」

確かに脳内に直接響くようなこの不思議な音のような声
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