「兎」/菊尾
すぎたか、すまない小動物よ。と反省しつつその場を後にしようと、ふらつく足取りで歩き始めたのだが、なんだか気になってしまいフェンスを乗り越えずにその飼育小屋へと向かった。
飼育小屋の中に居たのは一匹の兎。
暗闇の中、金網に小さな前足をかけて騒いでいた。
檻の中で叫ぶ小猿のように暗闇の中でも判別できる真っ白な身体を一生懸命に振って必死な様だ。
兎っていうのは一般的に大人しい動物なんじゃないのか?
端っこでうずくまって、もしゃもしゃとレタスかなんか食ってコロコロした糞をする生き物じゃないのか。
それをなんだ、この兎は。ガシャガシャと、まるでここから出してくれと言わんばかりに。
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