共感装置の勝利/岡部淳太郎
 
か。双方ともわかりやすさという点ではいい勝負である。だが、これらを隔てる明確な線が確かに存在する。それは後者のポエムが読者の共感を得るような方法で書かれているのに、前者二篇にはそれがないということだろう。どういうことか、詳しく見ていこう。
 まず筆者が急ごしらえで書いたポエムだが、ここには自己の感情を描くことのみに集中しているさまが見て取れる。語り手には「何もかも落としてやりたい」と思うようないやな出来事があり(それには後半に登場する「君」がからんでいるだろうことは見えやすいだろう)、そのために自暴自棄になってしまっている。その自分しか見えていないような視点は一貫しているのだが、逆に言えば自分自
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