共感装置の勝利/岡部淳太郎
 
来ないのではないだろうか。
 試しに一般に現代詩の括りに入れられている詩作品から、少し引用してみる。

ひとりでごはんを食べていると
うしろで何か落ちるでしょ
ふりむくと
また何か落ちるでしょ

ちょっと落ちて
どんどん落ちて
壁が落ちて 柱が落ちて
ひとりでに折り重なって
最後に ゆっくり
ぜんたいが落ちるでしょ

手を洗っていると
膝が落ちて 肩が落ちて
なんだかするっとぬけるでしょ

ひとりでごはんを食べていると
うしろで何か落ちるでしょ

(松井啓子「うしろで何か」全行)

 あともうひとつ。これは現代詩に親しんでいる人たちの間ではかな
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