多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
 
ているということは、誰の目にも明らかなのだ。勝利を確信した陣営から拍手喝采が湧き上がる。

【シーン8】
シーン1と同じ舞台。学会の会場のようなところ。会場は満員。夜。カメラはまず会場を俯瞰し、それから屋根に近い高く大きな窓へ。その窓を外側から割って、光り輝くような男性がスローモーションで入り込んでくる。ヒスパニック系のその顔は若々しく、黒髪はもつれうしろになびき、表情は恍惚として、バッカスを思わせる。彼は空中を滑り会場中央まで行って停止し、さしのべた彼の手の元に、銀色の縦の円盤があらわれる。男性はそれを触らずに操る。カメラは次に反対側の窓へ。今度は一人の女性が窓を割って入ってくる。白髪に赤
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