多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
 
見ながらも私は。

夢の中の登場人物にビデオを送る。それが可能だとは思わなかった。驚いた。私はハラハラしながら兄の一挙手一投足を見つめる。私のどうでもいいビデオの部分なんか見るんじゃない、おまえにはやることがあるんだぞ。妹を救え。本を送れ。妹が毒を飲もうとする瞬間、おまえはもう死んでいる、私はそれを知ってる、だから私は事前に知らせなくてはならなかった。本を託せ。最も信頼おける友に。母親は本の二巻目にカバーを掛けるだろう。一巻目ではいけない。二巻目だ。それでいい、それがいいのだ、それでうまくいくはずなのだ。だが私は結末を見届けることができない。なぜだか私はそれを知っている。


【独白―お
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