林檎愛好/木屋 亞万
う夢を否定することに繋がりかねない。だから彼はアダムと名乗っていながら、人類の起源の話をされることを嫌がった。彼を初めて知る者は、アダムという名を誤った方向へ掘り下げがちだが、彼はただアダムがイヴの夫であるという部分に着目しているだけなのだ。そのため彼は、イヴと関係のないアダムの話題は歯牙にもかけない様子だった。そのため自己紹介の途中にも関わらず、相手がアダムについて語り出すと、彼は林檎磨きに精を出し始めるのであった。私はそんな彼を見て、彼はオリジナルな現代のアダムなのだと深く納得したものだった。
流石の私も彼が一際大きな林檎を目の前にして、欲情し始めた時には、その情熱に狂気を感じてしまっ
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