男の走る距離は、/ブライアン
 
ば良いのだろう、と襷を受け取った男は思う。ゴールまで運べない襷を男は握る。男の息があがる。急激な下り坂は足に極端な負荷をかけた。男は重くなりつつある足を摩った。冷えていた。併走する川からの冷たい湿気のためだろうか。男は、体が動かなくなってしまいそうだ、と思う。事実、男の腕、肘から手の平にかかる一部分が、痺れはじめていた。男は、止めてしまおう、と思う。ゴールができないのだ、この区間を走りきっても意味はないだろう、と。
 下り坂から平坦な道に入ると、男の足は悲鳴をあげた。前半ペースが上がりすぎたのかもしれない。前を行く選手の姿が離れていく。男は、もう、本当に止めてしまおう、と思う。足が重かった。呼吸
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