夏の終わりに吹く風に/十重山ハルノ
迎えた。最終日の昨日の彼女は、丁寧に仕事に向かい、そつなく仕事を終えた。それはあまりにも、いつもの見慣れた光景だったから、明日には彼女が居なくなってるなんてことは、誰一人思っていなかったんじゃないだろうか。もしかしたらそれは、彼女にしてみても。
仕事の後で、ささやかな送別会が開かれた。あまりに普段通りの彼女は、会の最後の挨拶を、さよならではなく、ありがとうで締めくくった。さよならよりも、ありがとうを。いつもと違うのは、ありがとうと伝えた声が、確かに泣いていたことくらいだった。そして、みんなからの沢山の、本当に沢山の贈り物を抱えて、彼女は行ってしまった。
今日、職場に彼女の姿は無
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