ベンチプレス/よーかん
 
だ。そんなことをしたところで女に相手にされはしないのに気づかない。自分がいつでも正しくて、真っ当なのは自分だけだと信じて疑わない。劣等感の裏返しだ。精一杯あがいているのだが、悲しいことに全て裏目にでてしまっている。若い頃のワタシにもそういう所があった。もしこの時代にワタシが彼の年頃なら、あんなふうにアゴをあげて窓の外を睨みながら、ゼーゼーとウォーキングマシンと格闘しているのだろうか。
「スガワさん、コンニチハ、マイニチ精が出ますね。」
突然のスタッフの挨拶に、ハンドル引く動作が一瞬止まってしまった。さっきまでブラジル人の連中と話していた若者だ。身長は同じくらいだが、見事に筋肉が発達しているため
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