ベンチプレス/よーかん
ため正作よりふたまわりは大きく見える。ただし肉体の威圧感とは対照的に、職業柄か、白い歯が印象的でさわやかな好青年である。
「まあ、これ以外やることないからね。」
若者の顔に笑顔が浮かぶ。いつも同じ言葉で挨拶を返すことが、須川とこのスタッフのお決まりのジョークになっている。スタッフはマシーンのハンドルに手をあてると、須川が引くリズムに合わせて軽くサポートをし始めた。
「どうですか、そろそろ新しいメニューでも作りましょか?」
「いや、今のでワタシは十分かな。ボディービルダー目指してるわけじゃないからね。」
「ですね。須川さんは姿勢もいいし、体力もあるし、これと言って問題があるわけじゃないです
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