ベンチプレス/よーかん
 
。4時42分。ロータリーの山王病院の送迎バスがそろそろ発車するはずだ。ひと月ほど前に線路向こうのパチンコ屋が、改築工事でテレビ型の電光看板を壁に設置してしまい、正作には見慣れないロボットや少女の絵がチカチカと光っては消るようになった。始めの頃はうるさくてウンザリしたものだが、いつの間にか眼が慣れてしまったようだ。それにしても、あの醜い看板があることで、どれだけ客が増えるというのだろうか。土曜の午後にパチンコをするような男にだけはなりたくないなと、正作はタオルで額をぬぐいながら電光看板から目をそらした。小雨が降り始めたのだろう。駅の階段を上ってきた主婦が空を見上げて傘を開くと、あとから来たサラリーマ
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