詩人のシノギ (薄田泣菫の巻)/みつべえ
 
有明とともに文語象徴詩の大成者とされている。象徴主義については「上田敏の巻」で学習したが、少年の頃の私は象徴主義とは漢字のフリガナを格好良く付けることだと信じていた(笑)。明治大正の詩は大概そうなのだが、象徴詩はとりわけルビが多い印象があって、読みづらく難解だと感じていたものだ。もちろん泣菫の詩には、異国の詩法と母国語との葛藤の末に見いだされた独自の境地がある。だからいまでは、全篇にわたって打たれたフリガナは詩作の苦闘を物語る傷跡のように思えて、いとおしい。
 
 冒頭に引用の詩は、きっかりとした七五調でありながら魅力にとんだ音をだす言葉の連結と、均整のとれた絵画性が特徴的な作品である。ちなみ
[次のページ]
戻る   Point(6)