詩人のシノギ (薄田泣菫の巻)/みつべえ
 
(うらがれ)の葦の葉ごしに、
爛眼(ただらめ)の入日の日ざしひたひたと、
水錆(みさび)の面(おも)にまたたくに見ぞ酔ひしれて、
姥鷺(うばさぎ)はさしぐむ水沼(みぬま)、――『歎かひ』と、
『追懐(おもいで)』のすむ郷(さと)ならじ。

わがゆくかたは、八百合(やおあい)の潮ざゐどよむ
遠つ海や、――あゝ、朝発き(あさびらき)、水脈曳(みおびき)の
神こそ立てれ、荒御魂(あらみたま)、勇魚(いさな)とる子が
日黒みの広き肩して、いざ『慈悲』と、
『努力(ぬりき)』の帆をと呼びたまふ。


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 薄田泣菫(すすきだ・きゅうきん)は、蒲原有明
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