蝉とコロッケ/yuma
 
る構図は同じだ。だとしたら、しじみがコロッケだとしても小説は成立するんじゃないだろうか。よし、じゃあちょっとやってみようじゃないか。
じっと器を見下ろすと、ぷかっ、ぷかっ、と泡が水面に浮かんできた。コロッケの呼吸だ。音も無く殻を開き、息をしている。

やっぱりだめだ。コロッケは呼吸しない。
どうしようもないことに、殻も無い。コロッケにあるのは、さくさくの衣だ。コロッケに衣が無くてしじみの殻があったら何がなんだかわからなくなってしまう。完全に創作料理の域だ。しかも食べにくいことこの上ない。マズそうだし、自分で閉じたり開いたりはしてくれなそうだ。
コロッケではしじみの代わりは果たせそう
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