■老犬へ/千波 一也
だただ、からだと頭とを撫でてやりました。
ところで
この犬、
ほんとうはふたごだったのです。
知人から、
わたしが小学4年生だったとき、
おさななじみの友人と、
その兄弟を託されたのでした。
が、
その年に、兄弟は死んでしまいました。
交通事故でした。
とてもかなしい事故でした。
だからわたしは、
子どもながらに、我が家の犬に話しかけました。
「おまえは長生きしなさいね」
と。
首をかしげる犬に向かって
話しかけました。
すっかり老犬になってしまった愛犬を見つめながら、
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(6)