ショートショート/水のなかのガラスのように/いすず
 


火傷したって、いいじゃないか。おまえとなら、俺は、構わない。俺が火傷したいのはおまえとだけだ。
出会ってからずっと、おまえだけ見てきた。

おまえだけ、見てきた。


紘一郎が真剣な口調で繰り返し語り、その言葉を聞きながら、京子ははげしくその胸の打つ力強さに打たれていた。

「いつかした、覚えてるか、水へおまえが還る話」
「ええ」
「俺にも聞いた、水へ還るかと。俺は、こう思っていた。おまえが還るというのなら、どこまでもおともしよう。
おまえが戻りたいというのなら、海原の中へだって。でもな、おまえのことは離さないからな、一生」

「一生?」
「忘れるなよ。今の話。二
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