ショートショート/水のなかのガラスのように/いすず
 
で、クエスチョンマークをつけ始めた紘一郎の耳元に、彼女が、それは、あなたのことよ、と、
掠れるような小声でそう囁いた。
「何の意味だ、それは」
紘一郎は、聞き逃さなかった。いきなり、鋭い視線を向けた。
「分からなければ、いいの」
「よくはない」
紘一郎は、ぎゅっと手を握ったままはなさずに、京子の両手を自分の胸元に急に引き寄せると、怒ったように唇を合わせた。
京子は、目を閉じて、その荒いくちづけを感じていた。この、生命のもといのようなもの。
そのむきだしのいのちを感じるとき、彼女がどうしても感じずにはいられなかったこと。
彼女はちいさなくちびるの動きで、彼にささやいた。
根源的な
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