ショートショート/水のなかのガラスのように/いすず
 
いうよね。コウもそうかな?太古の祖先がそこから出て来た、生命の源へと」
「何の話なんだ?」
「わたし、そこへ還る気がするの」

彼女のおはなしは、ときに御伽話と見紛う。
唐突でとりとめもなく、根拠もないおはなし。
でも、そのとき、男・・・・・・紘一郎は、なぜだか、一笑に付せずに、じっと彼女を見守っていた。
「たいせつなおはなしなの」
たいせつな、たいせつな、ささやかな問い。
京子のひとみだけが、物語っていた。

わたしたちは、これから、何処へいくの。
これから、何処へ・・・・・・

ある日、いつもの待ち合わせ場所に来た紘一郎は、水中にきらきらするものを見つけた。
京子
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