夏の夜のこと/セルフレーム
 
ものだった。
毎年のように思い出すけど、今年は尚更。

―もう、君はいないから。


寒いだろうと思って持ってきた薄手のウィンドブレーカー。
そのポケットに、昨日初めて買った君の詩集が入っている。

ろくに読まずにページをめくって、最後の詩のタイトルに目がいった。


私が「私」になった理由


君は、何を考えてこれを作ったんだろう。

悲しみが消える日に、私が元気になるのなら


君は、何を考えて詩人になったんだろう。

傷跡が消える日に、私の涙が止まるなら


あの綺麗な丸い字は、何を綴っていたんだろう。

{引用=私が私
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