松明の道 /服部 剛
背後にはいつも
一本の松明(たいまつ)が
浮かんでいた
朝も昼も夜さえも
目には見えない
松明の幻
わたしが蹲る時
横道に反れた時
変わることなく
目の前に
照らされていたひとすじの道
この目はよく見えていると
この耳はよく聞えていると
思っていた
手にした棒で
足元を探るように日々を歩く
盲者のわたしを
こころある誰かが
バス停の列の最後尾を
知らせてくれるように
そっと手を取り
車内の座席に導くように
今
傍らを吹きすぎる風の姿が見える
耳元に囁く風の言葉が聞える
振り返
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)