死紺亭兄さんへの声援(エール) /服部 剛
り握る。
ベッドを覆う、カーテン越しの去り際に
僕等は互いの手を上げた
「 がんばろう 」
それはあの夏の大阪駅で
一足先に東京へ戻る僕と
人ごみの行き交う改札越しの君が
互いの手を上げた
旅の終わりの場面のように
病棟のまっすぐ伸びる
モノクロームの廊下を今日も
看護婦の靴音は響き
点滴をぶら下げた老人はゆっくり歩き
車椅子の少年は母親に押され・・・
人気無い長方形の待合室の椅子に座り
あの夏の日、そしてこれから僕等は
何処へ往こうとするのか
ひと時の間、考える。
あの夏の旅路で
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