死紺亭兄さんへの声援(エール) /服部 剛
 
路で 
僕等が胸に、刻んだ言葉。 


「 荷物を背負って、歩くしかない・・・! 」 

「 言葉の贈りものができる、詩人になる。 」 


腰を上げて、正面玄関を出る。 
振り返った背後に聳え立つ 
病院の窓を見つめ 
友の名を心の声で呼びながら 
駅へと続く道を、歩き始める。 

前方のビルに「青春出版局」という看板が見え 
( 青春を売っちゃぁイケナイな )なんて 
あの夏の旅路のジョークみたいな 
君の声が聞こえてきそうな心持で僕は 
地下鉄の駅へと続く階段を、下りる。 


   * 


数日後、ある詩友が見舞いにいったという。 
「 いのちに別状はないんだね・・・ 」というと 
ニヤリと笑った君はゆっくりベッドから身を起こし 
手渡した、見舞いの赤い林檎を
かぶり と齧りついたそうな。 

窓の向こうに広がる空の遠くに
太陽の顔は耀き 
病室を覗いていたという 

あの夏、僕等の旅路を照らした 
遥か昔の旅人の往く道を照らした 
音の無い呼び声のように 







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