ポエム的初恋のひと、平出さんの朗読会に/大村 浩一
 
も朗読をするようになった、との話。

 古井さんが朗読した作品は、私にはあいにくとタイトルは分からない。若い
男女がとある郊外のお屋敷の離れを見つけて同棲して、訳アリのその二人を住
まわせたその大家の老人が急死したら、明け方に謎の老女が訊ねてきて、本当
の相続人の姪が来るまで1昼夜半を共に過ごす…というお話。筋だけ書いたら
これだけだし、細かく書いたらネタバレなので詳細は控えるが、主人公が席を
外した時に同棲相手と老女が交す会話の気配とか、聞こえる筈のない生垣のそ
よぎが聞こえてくる部分だとか、細やかで幽玄なディティールの鋭さを堪能で
きた。古井さんなら人前で語る場数も半端ではな
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