涅槃/こんぺき13ごう
 
―Y


 水道水をすすりながら苔生した縁側にて

 鍵盤に流れる指が聞いたこともない音を垂れ流すのを
 沈んでは浮く意識の中でかすかにとらえていた

 命を奪うのではなく死を与えるのだ
 幾何学的な意図に花吹雪が舞う錯覚

 手のひらの花びらは融けて赤い水になる
 やがてはわたしの腹の子も彼のように女をだます男になるだろう

 ―――Y

 ジェット機は、中の人たちが落ちないようにと
 一所懸命念じているので、なかなか落ちません。

 ―――Y

 対消滅のように脱構成は成された。


 ―――Y


 わたしは産前、あたたかな羊水の
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