詩人のシノギ(上田 敏の巻)/みつべえ
 
義や自然主義に反発したフランスの若い詩人たちは、筋道の立った論理的な叙述を忌避して、イメージや音楽的表現によって感覚的で暗示的な詩をかいたのである。
 こんにちの現代詩の始祖となったこの象徴主義は、詩に豊かなバリエーションを約束した反面、詩を読み慣れぬ大衆に対しては難解性という宿題を残した。



 上田敏(1874〜1916)は、祖父、父、叔母がヨーロッパやアメリカに留学の経験をもつ家系に生まれる。1897年に東大英文科を卒業。大学院では、小泉八雲に師事、1905年に東大講師となる。欧米に留学後、1907年に京大教授。海外の文芸を広く紹介し、とくに象徴主義の啓蒙は、蒲原有明や北原白秋
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