自分を知ること/結城 森士
自分をわきまえている人間のことだ。
僕は自分をわきまえない人間だった。常に完璧を望むくせに、その努力が出来なかった。ちょっとした出来事を自分の中で大げさに解釈したり、悲劇的に解釈したりすることによって、悲劇から立ち直る英雄としての自分を夢想してその場をやり過ごしていた。ここにこう書いていること自体が、身に起こった出来事を誇大解釈している証拠でもある。僕はそういう人間なのだ。今、認めざるを得ない。
自分を特別視していたし、少しでも否定されるとすぐ怒った。とにかく人に認められたがるし、そのためなら自分を繕った。
失敗したときに自分を慰める言葉としての「僕なら出来るさ」という全く根拠の
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