「精霊、山の手」/菊尾
 
悩むって書いて煩悩だ。」
「煩悩の書き方聞いてないです。どうやったら山出れますかね?」
「私について来なさい。悩める若者よ。」
「いや、あの行き方だけ教えてくれたらそれでいいんで。」
「よし。じゃ座るか。」
「なんでですか」
「おじさんが若い頃にはこの国は色んなものが不足しててなぁ〜」
「生き方じゃないです。行き方です。山の出方です。お願いします。」

おもむろにおっさんは立ち上がるとアゴでクイッと合図した。
とんでもなく古かった。

「あの、どれくらいかかりますかねぇ?」
「君の子供が産まれるまでには出られるよ。」
「あの僕独身です」
「・
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