ハクチと呼ばれた少女/影山影司
影を落とさなかっただろう。僕は少女を愛した。愛を与えるために愛したし、何より湧き出る感情を押し留められなかった。
少女は書を好んだ。
貧弱な知識の中で唯一、書に関することだけは豊富に与えていたのだ。
僕は少女を膝に乗せて、少女の代わりに頁を捲り無言で読み聞かせた。
例え絵本であったとしても少女の細腕には重過ぎたのだ。
僕自身もビブリオマニアと呼ばれるほどの書物好きだった。遺産で譲り受けた屋敷の大半は、本棚とそこからあふれ出た書物ばかり。僕は俗物の蒐集家達とは違った。誰よりも書物を愛していた。数奇な運命を感じた日には数学者の書を、料理書は香ばしい珈琲を煎れてから飲んだ
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