かつていちどは人間だったもの/影山影司
 
の山奥の施設に入れられ、身内すらも面会できない。警備は厳重に、鬼の治療法は何年経っても解明されず、まして収容された鬼からの便りなど、まったく無かった。

 進みたくもない医者の道を歩まされて、生まれて初めて後悔したのは『施設職員』になっちまった時だ。法外な給金と国家機関勤務経験は旨かったが、それだけに何かあると分かっていた。周りのボンボンはハシャいでいたが、施設を目の当たりにしてビビりそのまま一週間で仕事を辞めた。

 分かっていると思うが、施設に入った『鬼』は全員すぐ死んだ。心不全とか、急性白血病とか、そんな感じだ。不幸な奴は風呂場で足を滑らして頭を打ち、一週間植物状態になった後死んだ。
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