かつていちどは人間だったもの/影山影司
 
だ。
 もちろん嘘だ。
 施設は『研究施設』で鬼は『研究対象』だった。
 俺の初めての仕事は、通路に並んだ裸の鬼共にナンバーを振り分けること。そしてそのナンバー通りの数字を背中にデカデカと染料で塗り込んだ。怯える鬼の目に慣れたのは、丁度一週間経ったあたりだった。
「ママの愛情が足りなかっただろ?」
 施設で俺の教育担当となった男は、一番最初に聞いてきた。糞ったれだ。
 ニヤニヤ笑う眼鏡の研究員が嫌いだった。そいつは結構なペドフィリアで、暇さえあれば物陰でゴソゴソしていた。
「俺もママの愛情が足りなかったんだ」
 倉庫からヒョコヒョコ出てきたかと思うと開口一番そう言われた。べとついた
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