今夜みる夢/よしおかさくら
た。花びらを取ろうと髪の編んでいたのをほどくと、風が髪をさらさらと梳いていきました。陽射しが強くなったので、帽子を返してとあのひとを見ると、先ほどより背が伸びているようでした。あのひとは帽子を差し出して、けれども私を見下ろしたまま、じぃっとしているのでした。涙ぐんでいる、大人びた目でした。真面目な顔をしているあのひとを見るのは初めてだったので、思わずその目に吸い込まれるように見詰め合っていると、頬に雨が降りかかりました。雨脚は激しくゆっくりと近づいて来ました。あのひともすぐにそれに気づいて、私を木陰へと促し、寒くないかと聞きました。私は寒くないと答えましたが、体ががたがたと震え始めました。あのひと
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