今夜みる夢/よしおかさくら
ひとは何も云わずに上着を掛けてくれようとしたので、私はそれを押し留めました。あなたが寒くなってしまうでしょう?そう云うと、あのひとは君の方こそ、唇が紫色だと云い、ついに私の肩を抱きすくめたのでした。あのひとの頬が確かめるように私の頭に触れました。背中が覆われて温かくなり、私たちはそのままじっとしていました。そのうちに雨音が止み、その代わりにかつんかつんという音が聞こえました。木陰から出てみると、遠くに星が落ちては地面に当たり砕けて、音を立てているのでした。寒さに固まって落ちてくる星の光と、弾け飛ぶ光を見て、あのひとは破片を拾おうと探しに行きました。私は小屋に戻り、あのひとの好きなコーヒーを淹れて、
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