今夜みる夢/よしおかさくら
 
。いつの間にか、身長の十倍くらいありそうな桜の樹が、私とあのひとの周り中に立っているのでした。呆然と見上げていると、風に飛んでしまった私の帽子を拾って、あのひとは花びらを拾い集めだしました。覗き込むと、落ちてきた綺麗な花びらだけを選んでいるようでした。しばらくして帽子が花びらでいっぱいになると、あのひとは私を芝生に座らせて、その上にひらりと帽子をひっくり返しました。花だらけになった私を見て、あのひとは大笑いするのでした。前の日に私が同じことをしたのを覚えていたようです。だけれども、前の日に私のしたのは少ない花びらをひらひらとしてあげただけだったのに、あのひとは繰り返してそのいたずらをするのでした。
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