【小説】僕らはいつだって本の虫なのサ/影山影司
 
時代、活版印刷と識字教育が庶民にまで広く伝わったことをきっかけに、帆の虫は本の虫と呼ばれるようになった。なぜか。それはそのまま、彼の虫が本を食べるからである。丁度白蟻が大黒柱を食うように、ゆっくりゆっくり、確実に。虫に食われた本はドゥナツのように、不格好なことになる。

 古びた作業台の上で何枚の羽を読み取ったか。寝食を忘れて没頭した作業である。水を飲まねば目が霞む。飯を食わねば指が震え、眠らねば頭が回らぬ。だから、そのためだけにそれらを行った。
 片眼鏡越しに覗いただけではまだ良く分からない。うねうねと歪んだ首を持つ光灯の頭を動かし、羽を照らす。
 ビニルなんかよりよっぽど上等で虹
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