沼の主/チアーヌ
俺は女がおかしいことなど、あまり気にならなかった。
「見ればわかるだろ」
俺は仕方なく、ぶっきらぼうにそう答えた。
朝からずっと、俺は釣り糸を垂らしているが、魚は一匹も釣れていなかった。
「うふふ。そうみたいね」
女はそう言いながらゆっくりと水面を泳ぎ始めた。
女は、薄衣のようなものを纏ってはいたが、それは透けていて、ほぼ全裸に近い姿だった。
均整のとれた体つきに、形よく張りのある乳房、くびれた腰。滑らかな白い肌に細くしまった足首。俺は、ついつい女の体を見つめてしまった。
(足は、あるんだな)
俺は女を眺めながら、どうだっていいことを思った。
(人魚でもないんだ。鱗もつ
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