沼の主/チアーヌ
 
もついていないようだし)
「人魚なんかじゃないわよ」
まるで俺の気持ちを見透かしたかのように、女が笑いながら言った。
「ほら、足だってあるわよ。こーんなに、立派な足が」
ちゃぷん。
 女はくるりと仰向けになり、まるでシンクロナイズドスイミングでもしてみせるように、片足を水面に高く上げてみせた。そしておどけるように足首を回した。
 俺は完璧にからかわれているようだ。
「でも君は、人間じゃないだろう?」
俺は思い切って尋ねてみた。
 女は首をかしげた。
「そうね。あなたの基準で考えたら、たぶん人間じゃないわね。でも人魚じゃないわよ。幽霊でもないわ」
「じゃあ何だ?」
「そうねえ
[次のページ]
戻る   Point(7)