詩人のシノギ(訳詩集「於母影」の巻)/みつべえ
 
を見てあないとほしき子よと
なぐさむるなつかしき家をしるやかなたへ
君と共にゆかまし


  其三

立ちわたる霧のうちに驢馬は道をたづねて
いなゝきつゝさまよひひろきほらの中には
いと年経たる龍の所えがほにすまひ
岩より岩をつたひしら波のゆきかへる
かのなつかしき山の道をしるやかなたへ
君と共にゆかまし





 明治21年(1888)、陸軍軍医・森林太郎(鴎外)が、ドイツ留学から帰国し、翌年に新声社訳として「於母影」を発行した。そのメンバーは、森鴎外、落合直文、市村サン次郎、井上通泰、小金井喜美子。いずれも外国語に堪能なインテリたちであった。「新体詩抄」
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