『狐憑き』/しめじ
 

「勝手にしなさい」そう言って私は書斎に引っ込んだ。

 狐を風呂場へ運び入れ、妻は襦袢が汚れるのもかまわずに丁寧に狐の身体を洗い血を流した。お湯が身体に浴びせられる度にびくんと背を反らせる狐。その姿を見て妻は満足そうに微笑んだ。終いには裸になって湯船に狐と一緒に浸かっていた。

 狐は二晩生きた。白いあて布を巻かれた狐は歩くことはできなかったが、餌はよく食べた。牛乳を湧かした物に小麦粉を少し溶かしてやったものを妻が匙で飲ませると、嬉しそうに口を開けて飲んだ。私は何とかという病気が怖かったので触るどころか近寄りもしなかった。狐も私に近寄ろうとはしなかった。ただ細長い顔をこちらに向けてひどく
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