『横町探訪』/しめじ
 
がら周りをぐるりと一周する。去年の晩夏に、恋人と歩いた阿佐ヶ谷の雰囲気に似ているなと思った。彼女はもう戻って来ないだろうが、思い出だけは残っていて何かにつけて思い出してしまうのだろう。そう思うと自分がとても女々しいような気がしてため息が漏れる。実際、彼女には今彼氏がいるようだ。警笛の音が鳴る。振り返ると線路が眼下に広がっていた。いつも乗る総武線は夕日を受けて走っている。外から見ると捨てたものではないなと思った。

 しばらく歩くと見知った道にぶつかる。見知ったスーパーに寄りイカと大根と里芋を購入する。

 帰宅後、夕飯をこしらえる。今日は煮物を作ろうと一念発起する。鍋に昆布を入れて出汁をと
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