『横町探訪』/しめじ
 
をとり、煮汁をこしらえるために酒、みりん、砂糖、生姜、醤油を鍋に入れる。醤油は濃い口であった。田舎は西だから昔は薄口を使っていたのだが、いつか恋人が「薄口醤油じゃ本領発揮できない」と言ったので、それから濃い口に変えたのだ。しかし醤油を変えてから恋人は家に来ることはなかった。

 煮物はとてもうまく出来上がった。大根にも味が凍みていて美味しかった。でも家の味は薄口だったなあなどと思いながらはふはふと里芋を頬ばる。スピーカーから枝雀が「上酒を上燗で」と笑いながら言っているので買ってきた酒を燗してこれを煽る。一人酒盛り。くうううなんて一人で言って、笑って、酒飲んで、明日も晴れて。

戻る   Point(1)