『横町探訪』/しめじ
 
親の手を握って前へ前へ走っている。
「僕は夜になるのが待ち遠しい!」
「どうして」
「だって夜になると寝て夢が見られるから」
 母親は少し困ったような顔をして笑っていた。少年は笑って走り出そうとする。

 児童館の前でスカートを履いた少女が三人並んで白い縄を空中に投げていた。両端を結わえて輪っかを作った縄をぽんと空に投げる。投げた少女は輪っかの中に足を射し込もうと足を上げている。おしいおしいなんて言いながら三人は賑やかに輪っかを投げていた。

 暮れかかった太陽が羊雲を淡く朱色に染めている。横町が少し翳りを増した。

 近くに高校の校舎があった。東京の運動場は狭いなと思いながら
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