『横町探訪』/しめじ
公は三半規管の異常によって方向感覚が狂い、現実をずれた状態で見たから町が美しく見えたと述べる。
犬について角を曲がったのは迷子になるためだった。三半規管うんぬんはどうあれ、見知らぬ道に出くわすと、胸が高まる。たとえそれが近所であっても、通い慣れた道でも、季節、日付け、時間、天候が変われば全く違う様相を示すから不思議である。
トタンばりの錆び付いた工場の真ん前で八歳くらいの少年がコマを大事そうに握っている。きれいにひもを巻いたコマを持って少年は辺りをきょろきょろと見回している。きっと回すところを親に見せようと思っているのだろう。
コインランドリーの前ですれ違った少年は、母親の
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