露悪/秋津一二三
談であると疑いウェイトレスをみたが、結局なんらおかしなところが見つからず黙った。
次に、男は周囲の客を盗み見た。年輩の紳士がフォークとナイフでステーキを切り分ける仕草をしていた。着飾った女がスープの表面をスプーンの背でなぞってはスプーンを口に運んでいた。小さな男の子はクリームソーダにささって動かないストローに口をつけ頬をふくらませていた。どの客も幸せそうであり、美味しいと言っている者も珍しくなかった。
男はフォークをとり、スパゲティーを巻こうとした。フォークを少し回転させ、口に運ぶ仕草をした。そうして、美味しい、と呟いた。
今度はもっとソースを絡めるように回転させ、こぼれない
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