記名の呪縛/岡部淳太郎
 
何いってんの、といい返されそうである」といったあたりに顕著だ。「若い詩人たち」を無意識のうちにも一般の「いまどきの若い人たち」と一緒くたにしてしまっているのだ。井川氏は「文月悠光、怪我、高塚都市魚などいった」「吉本(隆明)のいう『根拠のないペンネーム』の詩人たち」の名を挙げて、「そのようなペンネームを付けること自体、考えが安直であるといわざるをえない」と批判しているのだが、井川氏の言う「文学をバカにするな」というひと言は、そっくりそのまま井川氏に返ってくるだろう。なぜなら、先述のように井川氏は「若い詩人たち」を一般の「いまどきの若い人たち」と混同してしまっていて、彼等もまた井川氏をはじめとする先行
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