星の王子さまについて/渡邉建志
 
粋であり続け、この小さな惑星に住む小さな王子のことを書いた、とても小さく、比類のない美しさを持った物語も人々に読まれ続けるような気がしてならないのです。





12歳の少年の幻想はそう終わっている。
この文章のあとには、(これは必然的なことだったのだと思う、)大人になりきれず、しかし子どもの心も失ってしまった、中途半端な何者かが残らざるを得なかった。
中途半端な何者かは、B-612番という小惑星ではなく、モラトリアムというブラックホールに住んでいて、そこから抜け出せないでいる。


もう一度この本を開けることにした彼は、原著と英訳本に当たった。そこにはかつて感じられたは
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