星の王子さまについて/渡邉建志
 
たはかなさや悲しみが感じられなかった。英語はえらく簡素だったし、フランス語は、(第二外国語で触れた程度の彼にはその本当のところはもちろんよく分からないのだが)、流麗過ぎた。
それにくらべ、内藤氏の簡素な日本語の美しさは、悲しくはかない湿り気をもっていたように思われる。
少年が文章をやや上から目線で書いているように思われるのは、「自分はそんじょそこらの12歳とは違うんだ、この本のメッセージをまともに受け止めたのは自分だけだ」という驕りが彼に潜んでいたのではないか。蔑視は、まわりの子どもに対してだけでなく、同時に大人へも向けられるが、少年の周りには尊敬すべき美しい大人がいなかったのであろうか? こ
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