春の近い夏に通う?/吉岡ペペロ
 
 もう坂道も終わりかけのところで、三郎は足をとめた。三郎はそこでいつも、N市の夕日を見つめるのだった。
 たしかに、夕日が美しいような気がした。
 テレビで言っていたのだ。
 このまえ爆発したフィリピンかどこかの火山の撒き散らした塵で、日本じゅうの夕焼けが、最近、オーロラみたいに美しく見えるらしいのだ。

 ほんまにきれいやなあ、

 三郎がバスを使わず駅までの坂道をだっくだっくと不快なリズムを味わいながらおりてゆくのには、二つの理由があった。
 ひとつは、この時間帯、茶本春子と坂の途中で出くわせること。もうひとつは、N市の夕日をゆっくりと見つめれること。

 煙草を吸いながら
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